やさしい愛の手のひらで　今日もわたしは歌おう ――I will sing with a palm of gently love today――

昨日は卓球同好会の練習日。コーチが来てくださった。

ほかの仲間がコーチから指導を受けているあいだに球拾いをしていたわたしの耳には、遠く子どものころに聴いたアニメ「タイガーマスク」の主題歌だとかエンドタイトルソングだとかが出てきた。声を出さない程度に口にしてみる。また、テニスもやっている仲間が冗談半分で「エアテニス」、つまりテニスをやっているつもりで卓球ラケットをテニスラケットに見立て、サーブを打っている「つもり」をみせていた。それにあわせてわたしもテニスをしている「つもり」で「エアテニス」に興じる。こういうバカげたことだけれど楽しいひととき。

自分の練習のときはもちろん「つもり」なんかではない。

一瞬一瞬がとても貴重になる。二度と来ないという厳粛な、または意識を強くさせる。

ここにはわたしの大切な人はいないけれど、いると思って。いるのだけれどいないのだと思って。
ただひたすら、その大切な人のことは意識しつつコーチが打ってくる球だけをみつめて、打ち返す。よけいなことは考えも意識もしない。
ただひたすらそれだけを意識していたら、難しい球へ、いま取り組んでいることへの集中力と、大切な人への思いがさらにより深くより高くなってきた。

この一瞬にかけた、この一球にかけた。
今日が来れば明日は二度と帰ってこない。
アニメ「エースをねらえ！」のテーマソングが聞こえてくるような。