過ちを犯しても2009/08/28 22:30:07

もうまもなく、いろんな出来事が、それこそたくさんの出来事があった8月が終わる。

と、ここまで書いていま。
アメリカではプロフットボールのプレシーズンゲーム真っ最中である。
7月から始まったサマーキャンプで最大90人近い選手を順次カットして45人の選手と5名ほどの練習生に絞るために行われる。
そこに、あるひとりの選手がやってきた。

日本でも知られた選手のひとりである、Michel VICKは2005年に来日するなど、ファンを熱くさせた。10年ほど前から活躍が増えたアフリカンアメリカンQBである彼は、いまから2年前の07年に闘犬にかかわった疑惑がもたれて、連邦裁判にかけられた。当初否認していたVICKだが司法取引に応じた共犯者の証言で闘犬に資金供与をしたことを認めて有罪判決を受け、この年12月から今年09年5月までバージニア州の刑務所で過ごした。5月に刑務所から自宅に移され、7月20日の刑期終了までの最後の1カ月間を監察官の監視のもとに、自宅で過ごすことを許可された。
NFLコミッショナーのロジャー・グッデルは彼を出場停止処分にしたのち、彼が過ちを認めた上で同じ過ちを繰り返さないと、周囲に認めてもらえるようになれば、選手として復帰してもよいという判断を示した。VICKが所属していたアトランタ・ファルコンズは今年6月13日付で彼を解雇処分とした。同時に彼はアトランタ以外のどこのチームと契約できる立場になった。

選手生命を停止されるきっかけになった闘犬は、日本のそれとは異なるらしい。生で見たことはないのだけれど、たとえば土佐の闘犬は死ぬで戦わせるということはない、ときく。ところがVICKもかかわっていたそれは、死ぬまで戦わせるというものだったそうだ。彼の自宅から多数の犬の死体が見つかったという。

ここから先は日米の文化の違いでもあるので、単純比較はできないのだけれど、アメリカでも動物愛護団体から、闘犬に対する非難や批判が相次いだ。それだけに、死ぬまで戦わせるという闘犬にプロスポーツ選手がかかわっていたということは、子どもたちに対してもフットボールというスポーツに対してもイメージ低下につながる。

話はふたたびVICKのその後に戻す。
2年のブランクを経てどこも契約しないのではないかと思われたが、サマーキャンプを目前に、フィラデルフィア・イーグルスが彼との選手契約を交わした。もちろんグッデル・コミッショナーの許可を得てのことだ。

ここで、いま話題になっているあるひとりの元アイドル歌手だ。
結局、今日の報道で彼女は所属していた芸能事務所を解雇された。23年ものあいだかかわっていただけに、なんともいえない思いがあるに違いない。

彼女がかかわっていた事件……覚せい剤は、どう考えても許されるものではない。闘犬を動物虐待として訴えるのと同じように、薬物にかかわっていたことは本人だけではなく社会的な影響が大きく、はっきりいって彼女のやったことは許されるものではない。

プロスポーツ選手や芸能人に復帰が許されて、なんで一般の市民が許されないのか、という意見もあるだろう。ネット上では平気で、犯罪を犯した人間に対して「こいつら死刑だ」と断罪する声をよく聞く。それが正論であるかのように。死刑確定囚を早く処刑しろ、ともいう声さえある。だが、わたしは思う。石をもて投げつけようとする前に「あなたは罪を犯したことがないのか」と。自分の良心に、こころに手を当てて本当に、自分は正しいと胸を張って言える人がどれだけいるだろうか、と。

たしかに刑務所から出所して再び犯罪を犯す例はある。被害者や犠牲者の家族からすれば、一生出てこないでほしい、という気持ちもわからなくないではない。

社会的地位にあった人ほど、復帰ということについては一般以上に厳しい目が伴う。それは避けられない。
けれど、ほんとうに本人が反省し、やり直したいと思い、更生を証明したいと思っているなら、どんな人であれ、どんな罪であれ犯罪を犯す前の立場がどうであれ、社会に対して自分の更生を示す義務を与えるべきではないだろうか。
感情的に「死刑にしろ」というのだけが正義ではない。
わたしは、そういう感情に走ることほど、恐ろしいものはないと思う。わたしはそういう感情にくみしたくはない。