未練を断ち切るように2010/05/19 23:33:00

あんまり夜遅くに自炊をするのはよくないのだけれど、帰りが遅かったし、まあいいか。
というわけで明日の弁当と朝の用意をした。

朗読の今日の練習はまず、声も出して手もゆっくりはっきり動かすようにということ。次いでお客さんが見ているのだというイメージを描きながら、見ているお客さんに伝わるように。舞台に立っているつもりで練習をしてみる。

音楽はどうしようか。
今年は久しぶりに、ベートーベンのピアノソナタを使ってみようかと考えている。候補に挙げているのは晩年の作品、作品109、110、111のいずれかひとつだ。

1820年から22年にかけてつくられたこの曲はロマン・ロランに<ブレンターノのソナタ>と呼ばれている。
とくに110番は、献呈者なしで記録されている。ベートーベンの作品中、献呈者なしというのはほかに第8交響曲しかないのだそうだ。作品109は1820年11月にマクシミリアーネ・ブレンターノに献呈され、110と111はともにアントーニア・ブレンターノに献呈されるはずだった。が、110が献呈者なし、111だけがアントーニアとルドルフ大公に献呈されたのだと、ベートーベン研究家の故青木やよひさんは書いておられる(『ベートーヴェン・不滅の恋人』1995、河出文庫。底本は『遥かなる恋人に――ベートーヴェン・愛の軌跡』1991、筑摩書房)。
青木さんによれば、作品110の第3楽章について「この哀切きわまりない≪歎きのアダージョ≫ほど魂をゆさぶられるものを、私はほかに知らない。どのような形容詞をもってしても、その美しさを表現することは不可能だ」「それは、追憶と悲しみと悔悟が入りまじる思いで、力なくうなだれた芸術家の魂からしたたりおちる涙のようだ。だがまもなく思い直し、未練を断ち切ろうとでもするように弔鐘にも似た打鍵を9回くりかえして、この場面を終わらせる」とある。

朗読でわたしはいろいろな思いを込めて演じる。――昨日もちょっとあった。
ベートーベンほどではないにしても、涙を流しつつ、だがまもなく思い直し、未練を断ち切るように立ち上がり、できるなら魂をゆさぶられるものをつくりたいと思う。

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