たしかに難しいけれどね2010/05/21 23:04:14

手話つき朗読『ゆずり葉』手話づくりのご指導をいただく。

テキストを決めた後で朗読仲間に台本をお見せしたとき、彼は開口一番こう言った。「話の始まりがわかりにくい」。つまり、吾朗がどういう人物なのか、どういうことで「重い気持ちを抱えたまま」なのかが語られていない。だから聴く人にはわかりにくい、というのだ。
そこをうけて今日、手話通訳士と相談してみた。わたしは「映画作りを終えて帰ってきた」としたのだが、検討して吾朗の人となりがわかるように「俳優志望の」としてみた。

『今日は主人公が妊娠を告げられるシーンさ』
悩んだのは手の動き。主人公という表現を「演じる」+「男」(を左手甲の上に乗せる)とした。そうすると続けて、左手で女性を表すときに分かりにくいのではないか、と話してみた。結果は「男」だけで、右手で男を、左手で女性を表してはっきり区別しやすいようにした。手話表現は分かりやすさが大事ということ。

『一瞬戸惑うように息を止めてから、小さくうなずいた』
マンガで顔の横にストライプを描く、冷や汗をかくような表現があるが、手話でもそういう表し方をする。ここでは右手で女性(=さやか)+顔をひっかくように指を曲げて下ろす+右手こぶしを前に倒す、としてみた。

ご指導をいただいたあとで場所を移していろいろな話を交わしてくださったのだが、手話つき朗読の難しさは、ひとりで手話と声の両方をやるということ。うまいたとえではないかもしれないが、英語と日本語の両方でスピーチをする、というのに近いかもしれない。手話と語りのずれをいかに埋めるか。たとえばこうだ――。

『あなたは自分を売り出すチャンスにしか考えていない』
日本語対応手話なら、そのまま直訳して「あなた」+「自分自身」+「売る」+「都合」+「だけ」+「考える」とすればいい。読むほうもそのまま台本通りに。
日本手話なら「あなた」+「(顔を)表す」(両手親指と人さし指でL字型をつくって耳の前に出す)+「~だけ」とする。そのタイムラグをどう埋めて、いかに自然に読んでいくか。

とすると、たとえば手話落語など、語り手が何役もやる芸が参考になるのかもしれない。ほんとうに難しいけれどやりがいがある。手話をつけるとなぜか、長い台本でも覚えるのが苦にならない。

まだ手話訳は途中までしか完成していない。
残り4カ月。練習を重ねていきたい。