星くずから人類の長い進化の旅へ2007/10/08 23:20:47

とても興味深い記事を今日の新聞各紙に、みつけた。

イギリスの冒険家が13年かかって世界一周を成し遂げたというニュースである。
ジェイソン・ルイスさんというイギリスの冒険家は、1994年7月12日にグリニッジを出発。マウンテンバイクやインラインスケート、足こぎボート、カヤックなどを使い、つまりエンジンのつかない乗り物を使って4大陸を横断、大西洋と太平洋を渡ったという。その総距離は7万4842㎞、赤道(約4万㎞)の約1・8倍にあたる。

ひとくちに13年というけれど、その苦労はたいへんなものだったらしい。
記事によると、友人とともに出発から1カ月後にポルトガルに到着。1994年秋に足こぎボートを使って大西洋へ。転覆などの危機に見舞われながら、1995年2月に横断に成功。アメリカ横断の方法をめぐって友人と対立、別れて単独、インラインスケートを使ってマイアミからサンフランシスコへ向かう途中、コロラドで交通事故に遭い、足を複雑骨折。1998年に友人が横断旅行を断念して離脱、2000年にオーストラリアに到着したあとに、父親のがん手術のため帰国。オーストラリアではワニに襲われ、スマトラ島ではマラリアにかかり、2007年6月にスーダンからエジプトに入ってスパイ容疑で逮捕され危うく禁錮40年の刑をうけそうになったことも。

総費用は40万ドル(約4600万円)というが、スポンサーもなく資金難にも直面して、滞在先でアルバイトをしたと別の報道にはあった。
彼はインタビューにこう答えている。「体力の限界に挑戦するだけだったら、途中で絶対に飽きただろう。何年も続けるうちに、『人力』で世界一周を続ける意味が変わった」と。冒険や地球の気候変動などに関する講演活動を始めたいという。

だがこの記事を読んで。わたしは別の意味があると思ったのである。
人類の長い旅のあとをふりかえる意味がある。
人類がいつ、どこから誕生して進化してきたのか。いまだにはっきりした結論が出ていないのだが、アフリカにルーツをたどる説もある。
人類は発祥の地から、さまざまなルートをたどって世界へ散っていったのだろう。その旅と足跡は、気の遠くなるほど長く、苦難に満ちたものであったに違いない。いまのように交通手段がない。動物に襲われたり未知の病原体に冒されたり。はるかな、長い旅のあとにいまのわたしたちがある。ジェイソンさんは13年かかって世界一周をなしとげたが、遠い昔の人類、わたしたちの祖先はたどり着くまで、13年どころではなかっただろう。

故カール・セーガン博士(コーネル大学惑星研究所所長)の『COSMOS』という本の最後の部分を思い出す。

「私たちは、宇宙の片すみで形をなし、意識を持つまでになった。私たちは、自分たちの起源について考えはじめた。星くずが、星について考えている。100億の10億倍の、そのまた10億倍もの原子の集合体が、原子の進化について考え、ついに意識を持つまでに至った長い旅のあとをたどっている。」

気の遠くなるようなはるかな旅をへて、いま。
宇宙の片すみから生まれた星くずが、意識を持って、自分たちを何度も滅ぼすことのできる強大な力をもつに至った一方で、自分たちの起源について考える人たちもいる。
これから後、未来のわたしたちの子孫に、なにを遺すことができるだろうか。
滅亡と破壊か。誕生と創造か。

遠い過去から未来へ、問われているように思えてならない。