『鬼平犯科帳』から 「鈍牛」2011/01/14 23:55:38

仕事帰りの途中、本を探しに本屋へ。いつものように重い荷物をそばに置いて、つらつら読んでみた。
ふと目に入ったのは『鬼平犯科帳』。そのなかの作品「鈍牛」と「瓶割り小僧」が収められている、さいとう・たかおさんのマンガだった。

昨年のいつかにもここで書いたように、長谷川平蔵という実在の人物を取り上げたこの『鬼平犯科帳』。最近の時代劇小説もいいけれど、池波さんの作品はとても味があっていい。
ストーリーは、こうだ。

冬から早春にかけての江戸は、関東名物の空っ風もあって火災を呼びやすい。ある日、深川で放火があった。長谷川の部下、同心の田中貞四郎は、その放火犯と疑われる人物を捕らえた。江戸時代、放火は極刑に値する犯罪だった。放火犯には焼け跡そばの路上で3日間さらし者にされたのち、火あぶりの刑が待っている。
だが、その容疑で捕らえられさらし者にされた、深川の菓子店、柏屋の下男・亀吉を見る町の人からは、罵声やののしりではなく、同情の目や言葉が出るばかり。
別の部下である同心・酒井からの説明を聞き不審に思い、酒井とともに路上の亀吉を見、市民の声をそばで聞いた鬼平は、この事件を取り扱った南町奉行所に行き、奉行に処刑を3日間だけ延ばしてほしい、と懇願する。そして柏屋を訪れ、店の者に亀吉の身の上や事情を聞き、その過程で、思いがけないことを知る。だが処刑は刻一刻と迫ってくる……。

以前読んだことのある「鈍牛」を再読してみて、これを舞台でやってみようか、という気持ちがわいてきた。
いくぶんセリフに時代がかった言い回しがあるけれど、大部分は現代語で通じる。
マンガではなく、池波さんの原作を読んでみて、どうしてもこれだ! という思いがわきあがってくるなら、8ヵ月後の9月17日の舞台では、この珠玉の作品に挑戦してみたい。初めての時代劇小説を、もちろん手話と声の両方でやりたい。