高齢になるということに対して希望を抱けない施策2015/06/05 23:22:26

けさの新聞各紙1面に出ていた記事。
有識者でつくる民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、今後10年で東京など1都3県の「東京圏」の介護需要が45%増えて施設と人材の不足が深刻になるとの推計を発表。対策として、高齢者の地方移住などを提言、医療・介護に余力のある26都道府県の全国41地域を挙げた、というもの。

これは一面、なるほど、と思わせる内容だ。都会はこれ以上は施設と人材が不足するから、余力がある地方に行ったら、いいサービスが受けられるよ、というのだ。
しかし、そのバラ色のような案は、逆にかえって地方にしわ寄せがくることになり、東京圏の問題を地方に押しつける結果にならないか、という不安、はっきり言えば危ぐが大きい。

妻の故郷福井県も、わたしの故郷北海道も、介護に余力がある地域だと挙げられたが、ちょっと待ってほしい。
たしかに余力があるだろうが、移住しなさいと言われた高齢者の立場や気持ちは置き去りにされていないか?
不慣れなところにいきなり移って住みなさいというのは押しつけであろう。

4年前の震災や、ついこのあいだの口永良部島の噴火で避難を余儀なくされた人たちを考えてみよう。
自然災害であり、望んで移ったわけではないところで生活を営むというのは、かなり大きなストレスがかかる。知人がいなければ生活のための移動や買い物さえもままならない。あの大震災の被災地では、長期の避難生活で心身を崩し、将来に希望が見いだせずに、自ら命を絶った人さえもいるのだ。
都会では車の免許も車も持っている人はいるが、移動は可能に思えても、都心部と地方では道路に慣れるのは楽じゃない。第一交通量が違う。東京ではまず運転することがない妻は、福井に帰ってハンドルを握るのも緊張するとボヤいていたくらいだ。

そういった、個人的にも社会的にもさまざまな事情を考慮すべきであるのに、地方移住などと簡単にあげてほしくない。はっきり言えば、高齢者に余計な負担をかけるだけで終わる可能性が高い施策だ。
こういう案を出したのは、地方の暮らしを知らない人の思いつきではないだろうか。

わたしも2040年には80歳になっている(はず)。
そのころ、はたして生きているかどうかわからないが、もし移住できるなら福井なり北海道なりに行ってもいいとは思うけれども、いざそのときに体力や気力がもつだろうか。
はなはだ疑問を感じる。

これでは、高齢になるということに対して希望を抱けないだけである。