自分らしく 自分の存在をたしかなものに2008/02/02 22:17:22

新しい月に入って最初の土曜日。そう、朗読と手話サークルの日でもある。

その前に、朝7時に起きてわたしは、ある映画を見に行ってきた。
『中国の植物学者の娘たち』(原題:LES FILLES DU BONTANISTE CHINOIS)という、中国を舞台にしたある物語。

1980年代の中国。
両親を亡くし孤児院で育ったミンと、父である封建的な植物学者チェンに従って生きているアン。湖に浮かぶ植物園で出会ったふたりは、かけがえのない人を見いだした喜びから、ひそやかに愛を育んでいった。だがチェンが、アンの実兄、タンとミンを結婚させようとする。
封建的な男尊女卑社会ではアンとミンは周囲から白い眼で見られた。お互いがお互いを必要とし、「わたしの貞操はあなたに捧げる」と誓い合ったアンとミン。アンは、ミンがハネムーンでタンからせっかん暴行を受けたことを知る。
2カ月後。早く妊娠するようチェンはミンをせきたてる。
アンとミンは温室で薬草を蒸し、癒しあった。ある夜。薬を飲もうとして、温室で生まれたままの姿で癒しあうふたりを目撃したチェンは、ミンに手を上げようとしてアンに殴られ心臓発作を起こしてしまう。

人民裁判所に連行された、ふたりは極刑を宣告される。
ミンが孤児院の院長に書いた、最期の手紙には「山の寺院の仏塔に、わたしとアンの遺灰を合わせ、湖にまいてください。そうすれば安らかに眠れます」。僧侶と院長が遺灰をまく場面で終わる。

この作品をどうみるだろうか。いろいろな思いが去来した。
男尊女卑、結婚と出産が第一であり、女性は男性に従っていればよいと、自由を否定される。結果、生殖や出産に結びつかない同性愛は否定される。そして同性愛だとわかれば、極刑が待っている。

映画のプログラムによれば、現在の中国では同性愛は違法になっていないという。中国現代用語で「同志」(トンチー)とよばれる、同性愛者のサイトが多数あるという。
もうひとつの問題、死刑について。2006年のアムネスティー・インターナショナル調べでは、中国・イラン・パキスタン・イラク・スーダン・アメリカで90%を占める死刑執行数の約6割が中国だという。昔、「ニューズウィーク」だったか、公開銃殺刑の写真を見たことがある。町中をトラックに乗せられて引き回され、屋外運動場で後ろ手に縛られ、数人の官吏に捕まられて後ろから銃殺されるというものだった。いまは国際的な批判があり、薬物による処刑もあるという。
昨日、また日本国内でも3人の死刑囚が刑を執行された。

同性愛や死刑の問題はまた機会を別に譲りたいが、今作をみて、わたしはアンとミンの愛をけっして違法だとも不自然だとも思わなかった。たしかに裸になって抱き合う場面などはあるが、いやらしさを感じなかった。人と人が互いの存在をこころから求め合う愛の物語として見た。しかし、社会の中には、まだまだ同性の愛を不自然なものと見る考えがある。それもまた、わたしは認める。

愛は愛する者ふたりだけの問題であり、同時に周囲への問題でもある。
同性同士の愛を、生殖やモラルに反するとして、排除抑圧してきた歴史過去がある。悲しいことだけれど。
しかし愛するふたりの強さは誰も引き離すことができない。引き離す立場にないのではないだろうかと、思う。と同時にそれほどに強いからこそ、周囲との摩擦や苦しみも覚悟しなければならない。愛とはたたかいでもあるのだ。

現実には理想といわれるだろう。愛などありはしないと言われるかもしれない。自分たちだけのためではないかと。
けれど、純粋ゆえに許されない関係のなかで激しく、その純粋な愛を貫いたという意味では、異性愛と何ら変わるところはない。

愛とは、自分らしく。自分の生きた意味を存在をたしかなものにするためにあるのかもしれない。自分のすべてをなげうってでも誰かのために生きたいという大きなエネルギー。自分を愛するのと同じように、ほかの誰か、聖書でいうなら隣人を愛する。自分だけに向けられたエネルギーが周囲へ向けられる。見返りも利益も求めない。周囲をも巻き込むほどの大きなものなのだ。

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