とても大変な壁がある2016/08/15 23:20:07

これはちょっと違うけど
地下鉄銀座線、一時運転見合わせ 青山一丁目で人身事故
http://digital.asahi.com/articles/ASJ8H5WRBJ8HUTIL02K.html

ホームから転落、電車にひかれ重体 東京
http://mainichi.jp/articles/20160816/k00/00m/040/064000c

盲導犬と歩行中転落=駅ホームから、男性重体-東京
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016081500817&g=soc

はじめの記事では、「青山一丁目駅での人身事故」とあるだけで事故の詳細について触れていない。相模原事件以前からだけれども、個人情報については扱いが難しくなったために取り上げなかったのか書かなかったのかはわからない。
ところが別の同じ記事を読むと、はっきり「盲導犬」「連れ歩いていた男性」と書いてある。「所持品から障害者手帳がみつかった」ともあった。盲導犬になる前の犬を、社会化、人に慣れさせるなどのために自宅で育てる人はいるけれども、普通、目の見える人が盲導犬を連れて歩くわけはない。だからこの事故にあった人は、おそらく視覚障がい者とみていい。

ここでは障がい者として記事で取り上げたかそうではなかったかの是非を論じるのが目的ではない。わたしも当事者であるから、妻や家族が「取り上げないで、書かないで」と言われたらそうするかもしれないし、一方で障がいを知ってもらうためにはっきり「ろう者」と書いて欲しいとも思う。が、そのことはまた別問題。

話はずれるが、今週末にまた聴導犬の訓練のために長野県へ行く。
前回の訓練で言われたのは、聴導犬を交通機関に乗せるとき、絶対に守らなくてはならないのが、「犬を守る」ということだった。たとえばホームを歩くとき。犬を線路側に歩かせてはいけない。できるだけ線路側の反対、壁側に歩かせなさいと厳しく教えていただいた。
なぜだろうか。

答えは簡単で、犬がホームから線路に転落するのを防ぐためである。同時に、犬を危険にさらさないためである。
聴導犬は柴犬などの中型犬もいるけれど最近はシーズーなどの小型犬もいる。そのため速度が速い電車近くでは巻き込まれる恐れもある。加えて、聴導犬はなんといっても聴こえない人、聴導犬のユーザーにとっては耳代わりでもある。聴導犬を危険にさらすということはすなわち自分を危険にさらすということでもあるのだ。
だから、犬と同伴して歩くときは、絶対に犬をホームにではなく壁側に歩かせる。もしなにかあったときはリードを持つとは反対の、ホーム側の腕で守らなくてはならない。これは乗車した時にも同じことが言える。

「男性は右手に盲導犬を従えてホームの線路寄りを歩いていたが、徐々に線路へ接近」した、と時事通信の記事に書いてある。ホームにある点字ブロックの上を歩いていて誤って転落したのだろう。

聴導犬は「聴こえない人、聴導犬の耳代わり」と書いた。
盲導犬は見えない人にとっての目に等しい。だからどちらもユーザーとの信頼関係は、ある意味ペットと主人以上に強い。そうでなくては介助という仕事ができない。

前回の訓練から帰ってきて、ほんとうにこの国は障がい者にとってアクセスしづらいなあと、交通機関の利用ひとつとっても考えさせられた。
混み合う車内、ドアわきに立ってゆずらない人。ホームで居並ぶ人の前に降り立つ人。こんななかに聴導犬を連れて行くのは虐待かも知れないと、一瞬ひるんでしまうけど、ためらいおそれひるんでしまったらこの国は変わらない。少しでも障がい者が障がいのない人とともに移動できるようになってほしい。

問題は、以前にここでも書いたけど、やはり交通機関に盲導犬なり聴導犬なりを同伴するということはとても大変な壁があるということだ。
今回の青山一丁目駅はホームドアがない。視覚障がい者にとってほんとうにたいへんな壁なのだ。ドアがあるかないかだけでもどんなに移動するときの負担が減ることか、と思う。
一刻も早くホームドアを増やしてほしい。
あわせて、障がい者が移動しやすいように、介助犬、盲導犬や聴導犬の同伴も、もっとひろがるよう認めてもらいたいと、交通機関に協力と努力をお願いしたい。