今年観たなかでとてもすばらしい映画のひとつに2013/07/23 23:58:19

「25年目の弦楽四重奏」
仕事中に突然の雨が降るなど、大気が不安定だった一日。

妻と有楽町で待ち合わせて、この夏に観る予定の映画3作の、ます1作目『25年目の弦楽四重奏』を観た。

世界的に有名な弦楽四重奏楽団「フーガ」の結成25周年を祝った矢先、メンバーでチェロ担当のピーター(クリストファー・ウォーケン)がパーキンソン病と診断される。楽団からの引退を口にしたのを嚆矢に、楽団内にさまざまなあらしが吹き荒れる。第2バイオリンのロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)は第1バイオリンのダニエル(マーク・イヴァニール)と交代で第1バイオリンを弾きたい、と。ロバートと夫婦でつながれているジュリエット(キャサリン・ターナー)はロバートがジョギング仲間のピラール(リラズ・チャリ)と一夜の肉体関係をもったのを知り、彼に不信感を抱く。
ダニエルは、ロバートとジュリエットの娘、アレクサンドラ(イモージェン・プーツ)にバイオリンを指導しているが、ふたりは愛の関係に結ばれていく。音楽家として育てられた半面、娘より音楽を優先したひどい母親、とアレクサンドラがジュリエットをなじり、母娘の関係が冷えていく。
嫉妬や怒り、恋愛や思惑がからみあったまま、演奏会は2日後に迫る……。

ストーリーもさることながら、流れているのはベートーベンの弦楽四重奏第14番作品131。彼は全7楽章を途切れることなく演奏すべきだ、と書き残している。専門家によれば、この曲は演奏途中でチューニングすることが不可能で、狂っていく音程のなかで演奏するという、画期的な曲なのだそうだ。
だが弦楽四重奏楽団「フーガ」はいくつもの亀裂をかかえている。ほんとうに調和ができるのか? 演奏も楽団のまとまりも。

妻と深い味わい、余韻を残したまま、劇場を出た。妻の目はこころなしかいくぶんうるんでいた。

余談だが、原題の『A Late Quartet』も味わい深い。
演奏会のシーン、演奏途中でピーターが演奏を止め、聴衆に向かって「テンポが速すぎてついていけない」と語ってステージを降りる。まさにテンポが速いことの裏返しで「遅い四重奏」としたのだろう。

ともあれ、今年観たなかでとてもすばらしい映画のひとつに挙げたい。

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