目立たないところにこそ目を向けたい2012/12/20 23:40:58

久しぶりに「年末の風物詩」第9交響曲を聴きに、サントリーホールへ行ってきた。座席は前から2列目。バイオリンがすぐ目の前にある。

音響がとてもいいことで知られる同ホール。だがそんなことより、今回の演奏では、ある隠れたところに目が行った。
それはトライアングルとシンバルである。

今回の演奏は日本フィルハーモニー交響楽団。
バイオリンやチェロやオーボエなど、オーケストラでいつも編成される楽器には多くの人が目を向けるのは当然だろう。だが第3楽章、ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンといったソリストと一緒に入ってきた、トライアングルやシンバルを演奏する人たちに、サントリーホールの観衆のどれだけが目を向けただろう。たぶんほとんどは気づかなかっただろう。

けれどもわたしは、これらの演奏に強く胸を打たれた。
目立たない、大きな演奏でも派手な音色を出すのでもない。けれどもしっかり、音を出しているし、なくてはならない楽器だ。

聴衆の多くはきっと、指揮者の小林研一郎さんはじめ、ソリスト(テノール=錦織健、バリトン=青戸知、ソプラノ=菅英三子、メゾソプラノ=金子美香)、合唱を聞かせてくれた東京音楽大学の合唱団らに拍手をおくったに違いない。
わたしは、彼らにはもちろんだけれど、彼ら以上に客席から遠く、そして舞台の隅にあってたしかな演奏を聞かせてくれた、トライアングルやシンバルに、指揮者やソリストにまさるともおとらない拍手をおくった。