二つしかない手2012/12/01 23:03:14

師走に入った。
毎年のことながら、気ぜわしさがわたしを追い立てるようにやってくる。

今日は午後から『朗読のレッスン』。
指名されたパートは思ったよりもうまく読めた。先生からもおほめをいただけてうれしい。

森浩美 著『こちらの事情』収録作品、「荷物の順番」が今期のテキストだが、あらためてこころにしみとおる。

「正文、人は生きていれば色んなことがある。でも、人の手はふたつしかないからね」
「うん、人の手?」
「そんなに多くのことは抱えられないってこと。いくら大事なものを持ってても、もっと大事なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃならない。荷物を持つにも順番があるんだ。欲張ったり、無理をすれば、それは大事な荷物じゃなく、“お荷物”になるだけ。だから今、お前がちゃんと抱えてあげなきゃならないのは家族と仕事……」。

この年になると実感するねぇ。
若いときはあれもこれもと思ったけれど、やっぱり手は二つしかないから、無理はできないし、キャパシティー以上のものは持てない背負えない。

だからこそ守らなくてはならないものをもったら、それをしっかり抱えて守らなくちゃならない。
それが責任というものだ。

2週間後のミニ発表会で与えられたパートは、わたしひとりでやることになった。
気合いが入る。

Trouble with the Curve2012/12/02 23:54:41

「Trouble with the Curve」 パンフレットとチケット
クリント・イーストウッドというとオールドファンなら『ダーティー・ハリー』、最近のファンなら『許されざる者』などが印象に残るだろう。
今日、最新作『人生の特等席』を観てきた。

ガス(イーストウッド)はメジャーリーグ、アトランタ・ブレーブスの老スカウト。かれこれ長いあいだ、若い選手を発掘してはメジャーへ送り込む仕事をしてきた。だが、からだにしのびよる老いは隠せない。小用をたしてもうまくいかない。試合を見ても選手や球の動きが見えにくくなった。
時代は、目と足、そして経験で選手の力量をはかるより、コンピューターで打率などの能力をはかるようになってきた。そんなおり、ガスにも引退すべきだという、ブレーブス首脳陣。ガスには、弁護士の娘がいた。妻は他界している。だが娘とはしっくりいっていない……。

たしかに現実のメジャーリーグでも、オークランド・アスレチックスがそうであるように、コンピューターがはじき出した数値で選手の能力や価値を決めるようになってきた。
けれど、スポーツは人間がやるものであり、あくまでもコンピューターはその補佐でしかない。

この映画には野球シーンは出てくるけれど、メジャーリーグの試合シーンはまったく出てこない。あるのはマイナーリーグか、ノースカロライナ州の高校野球と州大会くらいだ。そして野球を知っているファンなら先刻承知だろうが、審判がメジャーのように4人制ではなく、2人だとか3人だとかである。よく観ないとわからない場面にもアメリカ野球がきちんと描かれている。

原題は「Trouble with the Curve」。人生の転換点とでもいえばいいのだろうか。それを「人生の特等席」と訳したのは、父と娘という関係を意味したのだろう。

スカウトという仕事は、わたしたちのまわりではまったく表に出てこない。ワールドシリーズの優勝チームを知ることはあっても、そのチームのスカウトが誰でどこの地区を担当しているのかさえ知っている人はいないだろう。
だが発掘した選手が能力を生かしてマイナーリーグからメジャーに上がっていけば、その選手を発掘したスカウトの眼力が高く評価される反面、まったくダメだったりマイナーどまりだったりすると、スカウトも同じくらい評価されなくなる。高級ホテルではなく、安モーテルに泊まったり年に90回も飛行機に乗ったり。そして他球団に出し抜かれまいと懸命になって選手を追いかける。自分の家族のことはほったらかしにしてまで。

そうまでして野球が好きなんだなと思う。好きでなくてはやっていられない仕事だろう。

父と娘、仕事、野球。
いろんな角度から観ることができる、珠玉の名作だ。

わたしひとりで、やることになった2012/12/03 23:28:11

2週間後、15日が今年最後の『朗読のレッスン』。今期は「荷物の順番」をやっている。
おとといの朗読のレッスンのあと、15日にやるミニ発表会の担当が決まった。なんとわたしひとりで、3ページほどのパートをやることになった。

手話をつけていいか? と講師先生におたずねしたら「せっかくひとりでやるのだから自由にやってみたら?」と。

時間がないけどがぜんやる気が出てきた。

この国の未来2012/12/04 23:00:08

去年のことだったと思う。寝ているあいだにこんな夢を見た。

人口減少で労働人口も少なくなった未来の日本。
ある日、エレベーターやエスカレーターが突然動かなくなる。乗り物だけではない。銀行のATMも、オンラインも、すべて動かなくなってしまったのだ。
原因は、テロではない。それらを動かす人が少なくなってしまったことによるものだ。

おととい、山梨県の中央自動車道笹子トンネルで、天井のコンクリート板が崩落し、9人が亡くなり2人がけがをする大事故が起きた。
事故は、トンネル最上部にボルトで鋼材を固定し、そこからコンクリート製の天井板をつり下げる構造だという。最上部に鋼材を取り付けていたボルトが抜け落ちたか折れたかして崩落につながったのではないかというのが現時点で判明していることだ。

テレビニュースでは、笹子トンネルと同じ構造のトンネル内部の天井板をつないでいる部分を、金づちなどでたたく「打音検査」を緊急実施するした映像が流れていた。笹子トンネルでは打音検査をしていなかったのだ、と、トンネルを管理する中日本高速道路の担当者が事故直後の記者会見で明らかにしている。

この事故をきいて思い出したのがはじめにみた夢だった。

この笹子トンネルも含めて建設から30年以上たっているトンネルが全国にある。今後も同じような事故が起きないとは断言できない。もし、いま東京で巨大地震が起きたら、高速道路はどうなるだろう。一瞬で崩落する可能性も否定できないだろう。想像したくないことだが、どんな悲惨な状況を目のあたりにすることになるのか、とてもこわい。

打音検査をしていなかったことを、簡単に手抜きだなどと言いたくはない。
だが、巨大システムや建築物を利用するのが人間なら、それを支えていくのもまた、人間だ。
これからさき、30年後40年後。どんなことになっていくのだろう。
そう考えると、政治家が訴えていることすべてではないにせよ、彼らの主張のなかにも、いまそれほど大事なものだと思えるものが少ないような。

受け身ではない会話だから楽しい2012/12/05 22:30:22

夜に手話サークルに顔を出してきた。
先週は人数が多かったうえに、女性が切り出した話題に盛り上がって、水を差してはいけないと男性陣はじっと聞いているしかなかった。

今晩はわたしの耳が聴こえなくなったきっかけ、新聞やテレビから情報を得ること、弁当男子や買い物難民といった世相などから話題を広げていった。

受け身でではなく自分から話をし、話題がひろがっていったからとても楽しい。

思い込みほどやっかいなものはない2012/12/06 23:14:10

調べていておかしいと思った。そこまではいいのだが、それを直そうとしたとき、あやうく思い込みで新たな間違いをつくりかねないことがあった。

思い込んでしまうことは誰でもある。
そのさき、一歩引いて冷静になること。

おもしろさと難しさと楽しさを2012/12/07 23:15:08

この今月4日に地震があったと思ったら、まもなく仕事を終えようという今日17時18分ごろ、突然強い地震に襲われた。三陸沖でマグニチュード7・3、震度5を記録したところもあった。先日も書いたトンネル落下事故を思い出す。もし都内を巨大地震が襲ったら、老朽化している高速道路などはどうなってしまうのだろう。

夜から、手話学習会があった。
来週土曜日にやる予定の「朗読のレッスン」ミニ発表会で『荷物の順番』の一部分を手話つきでやる、その手話訳作りのためだ。
A43枚。製本して綴じると6㌻になる。

手話通訳士先生と手話表現を考えて、意見を出したりわたしが表した手話を検討してくださったり。
1日ですべての手話表現が完成した。

あらためて手話つきの演技演じるということのおもしろさと難しさを、手話訳をつくっていく楽しさを感じた。
実質一週間しかないが、だからこそやりがいがある。

とてもおもしろく、参考勉強になった2012/12/08 22:16:44

休日の夜、久しぶりの手話落語研究会、笑草会の例会に参加してきた。
明日、埼玉県で開かれるイベントに出演するらしい。

まだ会員皆さんのお名前も覚えていないけれど、来年から正式に参加したいとあらためてお話しした後、明日のイベントに参加される方の落語やマジックをみた。
いやあ、とてもおもしろく、参考勉強になったのは間違いない。

手の動きにメリハリをつけること、表現でわかりにくい部分があったので、わかりにくい部分を落語のマクラにして本題に入ったらいい、など活発な意見が飛び交った。
来年からがとても楽しみだ。

だいご味が失われていく2012/12/09 23:29:55

NFLがキックオフ廃止を検討? 「奇抜だが一考に値する」
http://www.nfljapan.com/headlines/40886.html

フットボールの最高峰、NFLがキックオフの廃止を検討しているという。

現在、タッチダウンかフィールドゴールで得点したチームは、自陣35ヤードからキックオフをすることになっている。だが、報道などによると、タッチダウンかFGを決めたチームは自陣30ヤードからプレイを開始し、第4ダウンギャンブルで15ヤード前進すれば攻撃を継続できる案だという。ギャンブルを選択しなかった場合はパントを蹴ることになる。

なんだかおかしなゲーム、奇妙な試合が目に見えるようだ。
フットボールの魅力といえば、ディフェンスの網をかいくぐって投げられたり遠距離をかせぐパスプレーやボールを持って走るランニングプレーももちろんだが、試合開始のキックオフもそのひとつだ。キックオフで高く遠くへけられたボールをキャッチした選手が俊足を生かしていかにゲイン、距離を稼ぐか。俊足であればあるほど、スピードに乗って逆転のリターンタッチダウンを見せてくれたら、スタンドもサイドラインも盛り上がること間違いない。

だが一方で負傷のリスクも大きい。
キックオフのプレーで起用されるのは主に入団1~2年目の若手がほとんどだ。肝試しではないが、スピードとパワーを生かして突っ込んでくる選手も守る選手も、どれだけそのスピードやパワーと直面する恐怖を乗り越えられるか、試される場面でもある。それだけに時おりシリアスな、重い負傷を負う事故もある。ときには選手生命を断たれるほどの事故も。

だからといってだいご味がなくなるとなあ。
これまでも安全性を重視していくつもルールを変えるなど工夫をしてきた。クオーターバックへのタックルも、ボールを投げ終わった後ではなく投げる途中であってもイエローフラッグが飛んで反則とされたし、防具も脳しんとうを防ぐ構造になったり(でもなかなか脳しんとうが減らない)。キックオフも30ヤードではなく35ヤード地点でけるルール改正は、選手の衝突時の事故を防ぐためだった。

なんとなく違和感が隠せない。

冗談でもやっていいことと悪いことがある2012/12/10 22:08:01

オーストラリアのラジオ局ディスクジョッキー(DJ)の男女2人が英国・ウィリアム英王子の妻キャサリン妃が入院していた病院に偽電話をかけた事件で、電話を引き継いだ、病院の看護師が自殺したという。

このオーストラリアのラジオ局は「違法なことはしていない」と語っている一方で、問題のディスクジョッキー(DJ)の男女2人が10日、豪テレビのインタビューに応じた。女性DJは、自殺とみられる死を遂げた看護師の遺族らを思いやり「ごめんなさいと言いたかった」と涙ながらに語った。男性DJは「こんな悲劇になるとは」と悔やんだ、という。

やってからでは遅い。こんなことになる前になぜ、考えられなかったのかなと思う。

ついこのあいだも町田市に住む都内私立女子中学校に通う中学生が小田急線の電車に飛び込んで自殺をしたと報道された。その後、この中学生が通っていた学校で、いじめがあったという報道があった。

ネット社会だからおそらく、当該学校名も、もしかしたらいじめにかかわっていた生徒の名前も出るかもしれない。これもまた、新たないじめを産むかもしれない。

わたしも小学生時代の一時期、中学生時代にひどいいじめにあっていたからよくわかる。
いまも昔も変わりないのは、いじめた側は「うちの子に限ってそんなことはしていません」と言う親御さん、いじめた子どもはいじめということの重みに気づいていないか、気づいていてもすなおに謝らないか。
だからわたしは小学校はともかく中学生時代のいじめた連中とはこの先も会いたいとは全く思わない。それだけいじめというのはあとあとまで傷が深いのだ。

話を戻す。
オーストラリアのDJは「ショックで立ち直れない」とも伝えられている。町田の事件もどうだろう。一番悲しい思いをしているのは、看護師のご遺族であり中学生のご遺族だ。

冗談でもやっていいことと悪いことがある。
いじめは絶対に許されない。