字幕がなくなると困る2012/01/19 22:32:19

そういえば、と思いあたったのは、テレビ放送やDVD、スクリーンで映画を観るとき、字幕ではなく吹き替え版が多くなったなということだ。ここ4~5年、いやもっと前からのことかもしれないけれど。

「スター・ウォーズ」が日本で劇場公開されたのは1978年のことだが、そのころは劇場公開後3年間はテレビで放送しない、という不文律があったと聞いたことがある。だが最近は3年どころか、1年たってテレビ放送されるのがあたりまえになってしまった。DVD化されるのも早くて半年後というケースもある。

わたしがまだ補聴器なしでも聴こえていたころは、テレビで放送される洋画にはきまって吹き替えがあった。たとえばクリント・イーストウッドさんなら山田康雄さん、エディー・マーフィーさんなら富山敬さん、というように。
わたしがいまでも印象強く残っているのは、「チャーリーズ・エンジェル」(1976-82)のジョン・ボスレー役のデビッド・ドイルさんの吹き替えだった富田耕生さん。ややだみ声っぽい高い声が好きだった。ほかにも「バイオニック・ジェミー」(1977年1~10月、1978年3月~8月)でジェミー・ソマーズを演じたリンゼイ・ワグナーさんの吹き替え(田島令子さん)、スティーブ・オースティン役のリー・メジャーズは広川太一郎さんが吹き替えを担当された。そして科学啓蒙番組「コスモス」(1980年11月)でカール・セーガン博士の声を担当した横内正さんも忘れられない。先日放送が終了した「水戸黄門」を彼の代表作に挙げる人もいるだろうが、わたしにはカール・セーガン博士の声を知的な落ちついた穏やかな声の吹き替えで演じたほうが印象深い。いまこうして朗読をやっているのは、彼ら、声だけで表現するという世界に魅力を感じたから、ともいえる。

ここまでは、聴こえていたころの話。
いまではもう、補聴器で聞き取るのにさえ苦労しているのだから、映画を楽しむならやっぱり字幕があったほうがいい。
なぜ字幕が少なくなっているかというと、映像の切り替わるテンポが速くなって字幕が見づらくなったという映画関係者の話があるほか、めがねをかけて見づらくなった、子育てや家事の合間にみる「ながら視聴」ができなくなった、という視聴者の意見もあるそうだ。

でもやっぱり音声では楽しめない人たちもいる。少数者かもしれないが、映画という文化を楽しめるためにはやっぱり字幕もあってほしい。というかなくてはならないものだ。世界的には字幕をつけるという国は日本くらいで、ほとんどは字幕がないのだそうだが。
できればスクリーンでもテレビやDVDでも、字幕を残してほしい。これは聴こえない者の一方的なわがままだろうか?