めりはりと自然な会話表現を2011/05/17 23:35:16

といっても、日常会話ではない。
今日は手話つき朗読『鬼平犯科帳』手話訳づくりだ。

毎回のことだが、江戸時代という、いまとは価値観も社会構造も言葉も文化も習慣もまったく異なる時代を手話で表す。その作業がたいへんであるとともに、楽しいとも感じている。
同心、目明し、与力という言葉は現代21世紀の日本語の手話にはない。だからひとくくりに火付改メである鬼平の部下、と表すことにしたり、無実の罪を着せられた亀吉は、菓子屋の下男である。下男を奉公人として、仕える、腰に両手指先をつける表現とすることにした。

前回の手話訳では「人々の放火犯に対する憎しみは強かった」の「強かった」をそのまま「強い」としたが、検討してみると、前後の文脈から「当然、あたりまえ」とすべきではないかとご指導をいただいた。なるほど、財産も家族も家屋も失った人々の復興はたいへんだったから、放火犯に対する社会的感情は現代の比ではない厳しさだっただろう。さらし者になったあげくに火あぶりになるという極刑は、現代以上に犯罪に対する感情が苛烈だったことを意味している。

もうひとつ気をつけなくてはならないのは、会話場面の自然さだ。
平蔵と亀吉、安兵衛、酒井の会話場面が出てくる。それらをからだの向きを変えたり手の位置を上下にしたりすることで、登場人物の社会的位置、役割を区別し、また語っているわたしがそれぞれの登場人物になりきるように表す。
そういう意味で参考になるのは手話落語。
たまたまわたしの手元に大喰亭満腹という手話落語家のDVDがある。
じっくり見ながら参考にしたい。

やっていてたいへんだとともに楽しい、手話朗読のとりくみ。
これが手話演劇にもつながっていけばいい。