ファンの目線でいうなら2010/06/22 21:46:48

もうすぐフットボールシーズンが開幕する。NFLはまもなくサマーキャンプに入るし、カナダのプロリーグCFLはすでに各チーム2試合とはいえ、ロースター(登録選手)を決めるプレシーズンゲームに入っている。

今年で切れるNFL選手会とリーグ側の労使交渉で、リーグ側がレギュラーシーズンを従来の16試合から2試合増やして18試合にしたい、という提案をしているという。現在、NFLは各チームのプレシーズンゲームを4試合、レギュラーシーズンを16試合としている。それを2年後の2012~13年シーズンからプレシーズン2試合、レギュラーシーズン18試合に、というのが案だそうだ。
チームが存在しないロンドンとトロントでレギュラーシーズンを開催するなど、NFLは海外市場を開拓する戦略を広げている。日本にもオフィスを持っている。だが基本はアメリカ国内とみているのだろう。リーマン・ショック前と後では、そう簡単に海外へ打って出るにはリスクが大きいからだ。

ただし、これには問題がいくつかある。
まず、仮に案通りだとすると、スーパーボウルが終わるのが2月半ば。現在は2月第2週日曜日開催のスーパーボウルはすでに2014年までの開催都市が決まっている。が、開催があとにずれるとそのころはプロバスケットボールNBAやプロアイスホッキーNHLが始まっている。NFLとNBA、NHLのフランチャイズが同じ都市のチームにとってはテレビ放送が重なるほか、お客さんの集客が競合する可能性も出てくる。たとえばニューヨーク、ピッツバーグ、フィラデルフィア、ダラス、マイアミ、ミネソタがそうだ。この5都市は、NFL、NBA、NHLのチームがある都市だ。それ以外にもNBA、NHLいずれかとNFLのチームを持つ都市はある。

次に、選手にかかる負担の大きさ。
現行の16試合でも、選手はそうとうな負担を抱えている。負傷はもちろんのこと、疲労も考慮しなくてはならない。MLBのような半年もあるシーズンとは違って、試合は9月から1月まで基本的に週に1度、日曜日に開催という間隔が、かかる負担の限度ぎりぎりであろう。レギュラーシーズン終了後、地区優勝チームとそれ以外で勝率が高いチーム(ワイルドカード)の対戦、地区優勝、カンファレンス優勝と、最低4~5試合は戦わなければならない。ましてスーパーボウルはNFL選手なら誰しもが出たい。スーパーボウルの前後にはファンへの感謝をこめたオールスターゲーム、プロボウルがある。
一年をとおして温暖なサンディエゴやマイアミから、2月は零下にもなるピッツバーグやニューヨーク、クリーブランド、ワシントンDCやシアトルまで広大な国である。試合のための過酷な旅行は日本にいるわれわれには想像できないほどだ。
6月には80名の選手を抱え、契約解除や解雇もあるが7月のサマーキャンプから、8月の4試合のプレシーズンゲームは開幕ロースター(登録選手)枠の53人への絞り込みのためにある。これをプレシーズンゲーム2試合で登録選手を決めるのはヘッドコーチや選手にとって心理的にも体力的にも苦しいことだろう。CFLは8チームだがNFLは32チームもある。たった2試合でどうやって選手の能力を見極めるのだろう。NFLはMLB、NBA、NHLとは異なり育成組織や下部組織、つまりマイナーリーグを持たない。よってヘッドコーチ、選手双方にとって能力を見極め、アピールするには、プレシーズンゲームが貴重な場なのである。

ファンの目線でいうなら、現在は16試合の半分、8試合をホームで開催するのだが、いまでさえチケットはなかなか手に入りにくい。その飢餓感がさらにファンの欲求をあおる。ロンドンとトロントで開催している試合も、ホームゲーム8試合のひとつを持って行かれるのだから、ホームフランチャイズ都市のファンには堪えられない。案通り18試合でも9試合はホーム開催。それでもグリーンベイなど小都市ではチケットはさらに入手困難になるだろう。ファン離れはありえないだろうが、うれしい半面、不安もある。

もうしばらく、NFL選手会とリーグ側の労使交渉の推移を見守りたい。