たった一度のミスと記録には現れない献身2010/02/08 23:29:30

New Orleans SAINTS
わたしにとって一年で一番生き生きしている日かもしれない、NFLのチャンピオンを決める、スーパーボウル。今年は第44回、フロリダ州マイアミにある、サンライフ・スタジアムで開催された。
対戦カードはNFC代表、New Orleans SAINTS対AFC代表、Indianapois COLTS。AFCの勝率1位とNFCの勝率1位、つまりプレーオフで最も強かったシード同士の対戦だ。
結果は31-17でNew Orleans SAINTSが初優勝した。チーム創立から43年目の歓喜である。

試合全部をまだ見ていないのだけれど、やはり両チームともにパスオフェンスに優れているだけに、いかにパスを通させないか、パス攻撃をさせないか、という戦前の予想通り、試合開始から守備、とくに最後列で守るSS(ストロングセーフティー)やCB(コーナーバック)など守備バック、最前線のフロントラインの後ろで守るLB(ラインバッカー)がいい動きを見せていた。

野球でいえば打者が打席に立つ回数であろう、ファーストダウンの獲得回数がSAINTSは20に対し、COLTSが23(以下同)。うち、ランによる獲得回数は3-6。パスによる獲得回数は16-16とほぼ互角。
4回で10ヤード進めばさらに4回の攻撃権が得られる。つまり3回目と4回目の攻撃で成功したかどうかがかぎになる。ということは、3回目の攻撃(第3ダウンコンバージョン)4回目の攻撃(4ダウンコンバージョン)は、それぞれ9回試みて3回、1回試みて成功なしのSAINTSに対してCOLTSは13回で6回、2回試みて1回それぞれ成功。COLTSは3回目の攻撃で確実に次の4回の攻撃権を得られる、堅実なプレーぶりだったと言える。
総獲得ヤードはSAINTSが332、COLTSは432。圧倒的にCOLTSが優位。パス獲得ヤードは281対333。ランは51対99。ランの平均獲得ヤードは2.8対5.2。だがパスの平均獲得ヤードは7.0対7.4。これは互角と言っていい。

ではなぜ、New Orleans SAINTSがIndianapois COLTSに勝ったのか。
戦前の予想では、両チームともにパスオフェンスが優れている。だからパスを投げて相手にボールを奪われるなどのミスをした方が負け、というものだった。
実際その通りで、たったひとつ、SAINTSが勝っていたのが、被インタセプト回数と、インタセプト回数によるリターンヤードだ。SAINTSは被インタセプトなし。1回のインタセプトで74ヤードを走り、COLTSは被インタセプト回数を1回と、インタセプト回数によるリターンヤードで74ヤード走られてしまった。つまり決勝のタッチダウンにつながるミスを犯した。やってはいけないミスをやった方の負け。これが目に見える、試合を左右した原因である。

だがほかにもある。
New Orleans SAINTSのQB、Drew BreesとIndianapois COLTSのQB、Peyton Manningだ。パスを投げる前にタックルされる(被サック)こそ1回で7ヤード奪われたDrew Breesだが(Payton Manningは被サックなし)、しっかり味方の攻撃ラインが相手の守備ラインを抑えていた。とくにNew Orleans SAINTSのオフェンスラインはIndianapois COLTSの右DE、Dwight FreeneyのラッシュからBreesを守っていた。ときには2人がかりで食い止めていたほどだ。なぜ右DEからかというと、Breesは右利きでありボールを投げるのも右手である。プレーが始まってボールを投げるぎりぎり直前まで敵味方の選手の動きを確認はしているが、パスを投げるさい、背中や後ろに敵の守備ラインが迫っているかどうかまでは見えない(Blind side)。オフェンスラインがBreesの後ろや背中を敵の守備ラインからタックルされないようにしっかり守っていれば、Breesは少なくともパスを投げることに集中できる。

こういった、記録には現れない陰とでもいうべき、献身が勝利につながったのだ。