「おらは死んじまっただ」2009/10/17 17:58:59

今日午後からの朗読のレッスンの最中、わたしの携帯に飛び込んできたニュースが、ミュージシャンの加藤和彦さんの訃報(ふほう)だった。

今でも覚えているのは「おらは死んじまっただ」というフレーズが忘れられない『帰って来たヨッパライ』。
聴いた瞬間「なに、これ!」と叫んだのは、テープの高速回転による、まるで甲高いヘリウムガスを吸い込んだときのような歌声。「長い階段を 酒を飲みながら おらは死んじまっただ おらは死んじまっただ」という歌詞。「おら」は酔っ払い運転で死んでしまったのだという」(なんだか現代的でさえある。あのころだって飲酒運転はあったけれど)。歌詞は続いて、「雲の階段を踏み外して地上に戻ってきた」、後で、木魚をたたいてお経が流れ、ベートーベンの『エリーゼのために』でフェードアウトしていく……展開には、ぶっ飛んでしまった。
そりゃあ、天国はよいとこ、一度は……と思うけれど……。ねえ。

懐かしさというだけではなく、なんといったらいいのか。そういうアングラというかユーモアのある歌だけではなく、「イムジン河」などメッセージ性のある歌もつくってこられた。
40年以上にわたって音楽の世界で影響を与えてきたのだ。そんな人が「もう、やりたいことがなくなった」と言っていたという。それほど、芸術の世界は身をすり減らすものなのだろうか。

天国から帰ってくることはかなわないけれど、素晴らしい歌を残してくださったことに、感謝を。