風が過ぎていった 男たちが過ぎていった2009/10/10 22:49:04

連休初日。どうせだれとも会わない、会話もないから家で休んでいた。断わっておくけれど会いたくないわけでも会話をしたくないのでもない。ただ単に相手がいないだけなのである。

で、プロ野球をテレビ観戦。午前中にメジャーリーグ、アメリカンリーグのディビジョナルプレーオフ、MINNESOTA Twins-NEW YORK Yankees,BOSTON Red Sox-LOS ANEGELES Angelesを。ザッピングしてあれこれバラエティーを見たあとで巨人対広島戦を見た。

その巨人対広島戦は、広島カープの主力選手だった緒方孝市選手の引退試合でもあった。
8回に打席に立ち、大観衆の声援を受けて3塁打を打った彼は次打者でピッチャーの投球をキャッチャーが捕逸、3塁から本塁へ走ったもののキャッチャーからホームベースを守ったピッチャーがタッチアウト。それでも観衆は安打を放ったとき以上に声援をおくる。
試合終了後、観衆へのあいさつと、外野を一周して別れを告げた。
球場に来ていた、緒方選手の奥さん、かな子夫人と2人の娘さん、末っ子の男の子が緒方選手に花束を贈った。そういえば奥さんは元歌手、グラビアモデルもつとめていたことがある。久しぶりに公の場に姿を見せていたが、夫の活躍に涙が止まらなかっただろう。

アメリカはどうであるかというと。
引退試合などめったにやらないのが普通だ。よほど知られているとか所属球団だけではなく、リーグへ与えた功績が大きいというほどでない限り、試合後にセレモニーをひらくことはまずない。むしろあっさりしたもので、記者会見で「引退します」と言えばそれで終わり、がほとんどなのだ。まれに、長く所属していた球団とシーズン開幕前に一日だけ契約して引退、というケースもある。それは所属していた球団とその街のファンへの感謝である。日本以上に実力中心の世界だから、そのへんはドライだ。

けれど日米共通しているのは、引退を告げることもファンの前で祝ってもらえることもなく、どれだけ多くの選手がユニホームやジャージを脱いでいくことだろう。
今年も残りわずかのシーズン、ポストシーズンがあるだけだ。
そして多くの球団が人員整理のため選手に解雇通告をしたり選手自ら引退したりして、グラウンドやフィールドから去っていく。まだ余力があるとか本人がやれると判断していない限り、他球団への移籍やトライアウト(入団試験)しか、現役を続行する可能性がない。仮にトライアウトを受けても受からなかったら、マイナーリーグまたはインディペンデントリーグや外国のプロリーグしかない。残った選手にとっても移籍した選手にとっても、同じポジションを奪うか奪われるかの争いは、現役を終えるまでは続くのだ。実力中心とはそういうものだ。

ともあれ、今年も華やかなカクテル光線を浴びる世界を去っていく、多くの男たちがいる。
人生は、カクテル光線を浴びる時間よりその後のほうがずっと長い。
そのことをわたしもまた、胸に刻んでおきたい。

今日のタイトルは、武田鉄矢さんの『風がすぎていった』から。