ポイントをつかみ表現するということ2009/07/13 23:36:19

手話つき朗読舞台『塩狩峠』レッスン第3回目。

しかし、毎年のことながら、ほんとうに難しいものだとつくづく思う。声だけ、手話だけならこんなにも苦しんだり悩んだりすることはない。声だけ手話だけに専念すればいいのだから。
けれども手話をつけて読むのは、反対に読みながら手話をつけるのは、両方ともこなさなければならないうえに、わたしの場合はもとの台本、原文を変えない、という前提で表現する。つまり原文をそのままやるわけだから、手話にするうえで、原文をそのまま手話にすると、かえって手話表現がろう者や難聴者にはわかりにくくなったり、演じるわたしもあわてたりしてしまいやすいからだ。

説明調であってはいけない。まずこれは基本点である。

例として台本の一部を挙げる。
「飛びつくようにデッキのハンドブレーキに手をかけた。氷のように冷たいハンドブレーキを、力いっぱい回した」

ここをわたしは、
「驚く+デッキ(両手を数字3のかたちで囲いをするように)+ハンドブレーキ(車のハンドル+手でブレーキを踏むしぐさ)+つかむ+氷+冷たい+ハンドブレーキ(前述)+回す」とした。これでは長すぎて何が何だかわかりにくい。

先生から教えていただいたのは、
「あわてて+デッキ(前述)+つかむ+ハンドルから手を離す(しぐさ)+冷たい+回す(ゆっくりした動き)」。どうだろう、すっきりしているではないか。

つまり文章どおりに直すのではなくて、ポイントをつかみ表現するということ。
とても学ぶことが多かった。

今日学んだのは、作品のクライマックスである、塩狩峠の事故場面である。
通して何度も繰り返し練習しながら、わたしは長野さんを思った。
100年前のあの事故のとき、長野さんは何を考えていたのだろう。まさか自分が死ぬとは、その瞬間まで思っていなかったに違いない。けれどどういうかたちであれ長野さんが亡くなったことで、100年たったいまも多くの人に影響を与えている。
同じようにわたしも生きられるとは夢にも思わないが、この舞台に向けて全力で取り組みたい。そしてわずかでもいいから、わたしもその瞬間まで誰かのために生きたい。自分への評価などというのはあとに回して。