視点を変えれば……なるほど!2008/06/23 23:22:50

長く生きてきたらそりゃ、いろいろあるわな。逃げ出したいこと、避けて通りたいこと、しんどいこと、つらいこと……。

昨日の新聞朝刊を開いて、あるロックシンガーのインタビューをまとめた記事を読んだ。彼の名は矢沢永吉。

高校時代、ちょうどロックがブームで、通っていた高校の寮には、部屋に「E.YAZAWA」と染めたタオルを張り付けた仲間や先輩がいたし、リーゼントに染めたヘアスタイルはそこらにたくさんいた。わたしはどうも苦手で向いていなかったから、ロックを聴いたこともなければリーゼントにしたこともない。
しかし、矢沢さんのことはそれなりにいろいろ聞いてはいる。
いまから10年前、オーストラリアで自らの拠点をつくろうとしてビル建設を計画したのだけれど、信頼していた部下が矢沢さんの会社を使って別のビジネスを行い、詐欺・横領・公文書、私文書偽造など、起訴件数73件、被害総額は30億円にもなった。インタビューでは「借金の大きさもそうだけれど、身内に裏切られたショックが大きかった」と語っている。

さらに語る。
「もう駄目だもう駄目だと落ち込み続けてた。(中略)でもね、一週間もそうやっていたらアホらしくなってきて、(中略)これは映画だと思えばいいやって」。矢沢さんはこう語る。「ほら、人間は何度も生まれ変わるというじゃないですか。このたび僕は、キャスティングで矢沢永吉になったわけ(笑)」

リストラされたって、借金を背負ったって、それは役だと思え。苦しいけれど死んだら終わりだから、本気でその役を生き切れ。つまり視点を変えれば、気持ちが切り変わるってことなんだ。そう最後に語る、矢沢さんの言葉を聞いて、今回のテキストで使う台本を思い出したのだ。

第一稿(最初の原稿)ではこんなくだりを入れた。実際にわたしが経験したことである。

昔の職場で、上司からこんな言葉を言われた。「こんなやつに、何言ってもわからないからほっておけ」。一瞬血が上ったのを覚えています。それ以上に、上司として人間として信頼できなくなったことを覚えています。

決定稿である第二稿では、これを含む数行をカットしたあとに、以下の文が続く。

そうか。ぼくらは生まれる前に自分で決めたこの聞こえない人の役を最大限に演じないといけないんだ。自分と話すのが面倒くさくて離れていく人だって。それは冷たいひとなんかじゃなくて、前もって舞台裏で打ち合わせしていたことなんだ。このすばらしい宇宙の中で、ぼくらはみんなひとつなんだ。

矢沢さんの言葉にあるね。「本気でその役を生き切れ。つまり視点を変えれば、気持ちが切り変わるってことなんだ」
そうか。そうすると聞こえないこのからだに生まれたこと、顔も身体能力もひょっとしたら平均以下のわたしにも、生まれる前に自分で決めたのではなく、神さまからいただいたのだと思う、聞こえない人の役を最大限に演じないといけないんだ。

と思ったら、気が楽になった。よし、9月の手話つき朗読舞台は、いつかまた舞台に立ちたい手話ソングダンスは、そして日々の生活は、最大限に生きたい、生きなくてはもったいない。一度しか経験できないこの貴重な役を、人生の舞台を降りる、その日まで精いっぱい演じなければ。

今、中島みゆきさんの「時代」を英語でカバーしたシンガーのCDを聴いている。とてもいい、オリジナルに勝るとも劣らない、すばらしい歌唱力と英語詞だ。

写真はけさの、雨のやんだ雲間。やまない雨はないし雲の向こうに青空はかならず見えるね!