メモリいっぱいになるほどの思い出を2008/01/10 23:22:34

はじめて、持ち歩く電話を手にしたのはいまから15年くらい前だったかと思う。そのころはPHSだった。
その直後にアメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズを旅行で訪れて、現地在住の通訳スタッフ女性が使っていた携帯電話は、黒色のがっしりしたデザイン、まるでトランシーバーのように見えた。とても見た目にも持ち歩きやすいとはいえないものだったと記憶している。

携帯契約数、1億台を突破 登場から20年
http://www.asahi.com/business/update/0110/TKY200801100166.html?ref=desktop

PHSをそのころ使っていたミニノートパソコンと接続してモバイルインターネットを始めたけれど、通信速度など携帯電話より劣ることが分かり、携帯電話に切り替えた。なによりカラー画面やカラー文字を使える。メールにせよ携帯サイトにせよ、楽しみ方が増えたのが大きい。
その初めての携帯電話で、真理子さんとメールでコンタクトをとったり教えていただいたりした。同じ携帯電話のメールで、真理子さんが亡くなられたという知らせを受けたのは大きなショックだった。真理子さんの携帯アドレスにメールを送っても返事はかえってこないが、いただいたメールは終生の宝となってしまった。いまでもこの携帯をあけるたびに、悲しみと思い出が交錯する。
みなさんもそうではないだろうか。古くなったり使えなくなったりした携帯電話を処分できずにおいてある人が多いと聞く。その理由はメールなどさまざまな思い出があるために捨てられない、というのが一番だそうだ。

2台目の携帯電話。海外でも使えるというので購入し、初めてドイツとオランダからメールを送った。受けた日本の友人は「初めての海外からのメールだ」ととても喜んでくれた。「安倍晋三首相(当時)が辞任する」というニュースをドイツのホテルのテレビではなく通信社からのメールニュースで知り、日本に知らせたときは驚かれた。

そしていま。
2台目の携帯電話についているカメラがおかしくなるなど、故障が目立ち、思い切って最新型の携帯電話に買い替えたのである。
いやあ驚きの連続。カメラやワンセグテレビ、さらにはなんとGPS(Global Positioning System 全地球測位システム)により、自分や相手の現在地がわかるのだという。仮に携帯電話をなくした、災害にあって自分の位置がわからない、海外での自分の位置など、調べたり位置情報を相手に伝えたりすることが可能だというのだ。黒色で統一した、携帯電話と補聴器の電池チェッカー、フットボールをイメージしたブレスレット。わたしの数少ないお気に入りだ。

「ウルトラセブン」に出てくるような腕時計型の携帯電話も夢ではないのかもしれない。いまは携帯で漫画や小説が読めるのだそうだ。これも驚き!
しかし、技術の進歩には光と影の両面がある。
犯罪に使われたり犯罪に誘うサイトも存在するし、携帯メールに依存してしまい、生の人間としてのふれあいが少なくなってしまうこともある。
その光と影をどう使いこなし、のみこまれないようにするか。
誕生から20年がたったという携帯電話。
難聴者のコミュニケーションの世界を大きく広げてくれた。
だからこそこの小さな電話に「使われる」のではなく「使う」こと。使うわれわれのありよう、姿勢が試されている。
そしてどうせ携帯するなら不愉快なことではなく生涯忘れられず捨てられないほどの楽しい思い出をケータイしたいものだ。できるならメモリいっぱいになるほどに。