ベートーベン2006/06/13 22:44:08

 数年ぶりに阿部牧郎さんの「地球交響曲」を初めから読み続けている。10月の朗読のために再読している。来月に迫ったフランス旅行の機内でもたぶん読むだろう。時間があれば、ウィーンやベートーベンの生地ボン、彼が遺書を書いたハイリゲンシュタットなどを訪れてみたいのだけれど、それはいつかの夢にとっておこう。

 ベートーベンがベートーベンである限り、何ものも縛ることができない。そう小説のなかで語られている。
 いま以上に障害者への差別や偏見があからさまだった19世紀にあって、わたしと同じ重度聴覚障害者であったベートーベン。加えてついに家族をもち愛する人と結ばれることはなかった。死後に発見された手紙から、意外な女性関係があったことが知られるようになったが、生前は音楽家としての知名度はあっても結婚したいと思うような人とはめぐりあえなかった。
 
 わたしもどうだろう。
 わたしがわたしであり続ける限り、何ものもわたしを束縛することができないのか。
 聞こえないままでいい、再発してきた抑うつ状態のままでいい。

  ベートーベンを敬愛した指揮者で音楽家の岩城宏之さんが今日午前0時20分、心不全のため亡くなられた。73歳だった。
 ステージの上で死にたいと口にされ、昨年末、ベートーベンの交響曲1番から9番までを続けて演奏指揮された。今年も年末に同じプログラムを予定していらしたそうだ。

 さまざまな不遇と試練のなかで雄々しく生きた、ベートーベン。
 朝比奈隆さんと並んでベートーベンを敬愛した岩城さん。

 いくつもの試練があるけれど、試練をへてより強く雄々しくなることができたら。